山口 薫(やまぐち・かおる)
1907-1968 年 群馬県高崎市生まれ
山口薫は詩魂の画家と呼ばれる。若き日にはドイツロマン派の詩人、ノヴァーリスに憧れ、晩年は西行に我が身を重ねた。「詩がぼくを支えてくれる」と書き残している。豊かな詩情と近代的な造形感覚によって、抽象と具象の境を取り払った作風を示した。その抒情あふれる豊かな絵画世界は、日本的感性の美を感じさせ、今なお高い評価を得る。
東京美術学校在学中より帝展に入選。渡仏し、色彩感覚を磨き最初はフォーヴィスム風の画風を示した。帰国後、自由美術家協会の結成に参加。この頃より独自の文学的幻想性を滲ませた作品を発表する。戦後はモダンアート協会の創立に参加、洋画界を牽引する画家として注目された。
「丸い沼と春の雪」は晩年の作品。本作のように、晩年の作品には孤絶感が揺曳し、幻想性や詩情が一層強く表出されるようになる。